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建築士会コラム

役員リレーコラム「風のささやき」西讃支部 理事 今井志郎

 子供のころから、よく映画に連れていってもらった。好きだった映画は西部劇で、主人公が馬に跨り、丸めたモーフを括り付け旅をするシーンで、夕方になる山や草原で食材を調達し、キャンプ地が決まると愛馬から鞍を外し蹄を見て労わる。小枝を集めて火を越し、その火で真っ黒になったフライパンでお決まりのビーンズ料理を作り、バンダナでコヒー豆を石で潰して香りを楽しみながら仲間と会話をしながら飲み、そして顔にハットをかぶせモーフに包まって眠りにつく。雨になれば枝を立てて簡易テントを作り、雨が止むのを待ち、自然のペースに合わせて旅を続けて目的地を目指す。

 小さい時の憧れは、愛馬が自転車になり、16歳からはバイク(鉄の馬)に跨り、テントや鍋釜を荷台に括り付けて山に入り、自然の風のささやきを聞きながら、沢の水で料理する、メニューはもちろんチリビーンズそしてドリップコーヒーを飲み、満天の星の下、テントで一夜を過ごす。

 今でも年に何回かではあるが、鉄の馬に跨り、光、雨、温度そして見知らぬ土地の風や香りを体全身で感じながら、風土に育まれた建造物を見て廻る旅が50年間続いている。

 今まで、ウサギ小屋から市民会館まで、色々な建設に携わってきたが、いつも最初に考えたのは、建設しようとする建物を使う人、利用する人が如何に心地よく過ごせる事が出来るかどうかである。それは、四季折々季節を感じる光や風の空間があり、窓からは、柔らかな光りが射し込み、開ければ、心地よい風がささやき、そこで自然を感じながら、生活や勉強や仕事が出来き、極力機械に頼らない建築を目指してきた。

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 昔の人々は、山の恵み、海の恵みなど、衣食住の全てを自然の中から創り出し共存してきた。山から木、小枝、枯葉を集めて、家を建て、釜戸で火をおこし料理を作り、冬は暖を取り生活をしてきた。小生が低学年の頃まで我が家もそうであった。そうすることにより、必然と豊かな山が生まれ、その栄養素は川から海へ流れ、魚の餌となり豊かな海が生まれる、自然と循環型が形成されていた。建築材料である木や土壁はリサイクルができ、再建に使用し、物を大事にしてきた。

 地球上の生き物の中で、人間だけが自然に生かされている事を忘れて自然を破壊し、人間だけの繁栄を進めてきた結果、地球温暖化を生み、異常気象が当たり前になった今、やっと重い腰を上げ問題に取り組むようになった。

 石油危機を起因にして、建築分野では1980年に住宅の『省エネ法』が施行され、どの住宅メーカーも断熱性能を高める為に高断熱、高気密な住宅を作り目玉にして売りだした。この時、「何か変?」とひっかかる物があった。どうして自然との共存が前面に押出さないのか、どうしてその土地土地の風土に合った住宅の建築様式が確立されたのか、などの見直しが出来なかったのかを、法を読みながら思ったのを覚えている。

 皆さんの中にも、同じように感じた方もおられるのではなかろうか。
 また「省エネ法」が住宅の乾式工法を加速させ、本来、その地の風土に合った日本建築に必要な大工、左官等の技術の伝承が廃れてきたも要因の一部と思っている。

 昨年、建築士11月号の特集に『気候風土に根ざした木造建築の継承』が掲載され、色々な内容の記事があり、読みながら改めて我々に突き付けられている責任は重大であると感じた。今までにも色々な分野で、自然の修復に取組んではいるが、我々も建築に携わる者として、真剣に自然と共存に向かう事により、省エネ、建設資材、人材不足、技術の伝承等の問題の解決に時間は係るが、つながっていくと思う。

 小生も仕事をリタイヤする年になってきているが、これからも自然の恩恵を受け、仕事やバイクライフを楽しみ、暖かな風のささやきを感じながら過ごしたいと思う。乱文ですが、持論を少し書いてみました。

※ 小生の鉄の馬は「スーパーカブ110プロ」で郵便屋さんが乗っているのと同じタイプで、旅は、いつも心和み、時速30kmで走る世界が、一番自然を感じる事ができ、至福の時間。

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