【高松支部】日帰り見学会に参加して
この度、「武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル)」(1930遠藤新)と「重要文化財 神戸女学院」(1933ウィリアム・メレル・ヴォーリズ)を特別に見学することができました。どちらも日常的に公開されていない昭和初期の名建築です。
「武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル)」は、帝国ホテルの設計で有名なフランク・ロイド・ライトの愛弟子である遠藤新が手掛けたライト式建築です。六甲の山並みを背景に南に広がる池泉式庭園、昔はその先に屋上からは海を臨め、四季を感じられる配置計画となっていました。
外観は深い軒と2つの塔による水平ラインと垂直ラインが特徴であり、打出の小槌をモチーフにした緻密な装飾が施されています。特に西ホールのレリーフと市松格子光天井は印象的でした。
現在は客室が講義室に改修されていますが、かつてのホテル時代は各部屋から廊下を通りテラスや庭園に出て、優雅な時間を過ごしていたのだろうと想像しました。
ホテルとしての歴史は14年と短く、戦後は進駐軍宿舎等の使用を経て、現在の教育施設に再生されました。様々に用途を変えながらも今に息づく名建築でした。
(因みにF・L・ライトがデザインした二代目帝国ホテルは、エントランス部分のみが博物館明治村に永久保存されており、建替えられた三代目ホテルも2030年に田根剛氏による帝国ホテル 東京 新本館(四代目)として、生まれ変わる予定です。)
「重要文化財 神戸女学院」はウィリアム・メレル・ヴォーリズによる建築で、最初に案内された「講堂」は半円形プロセニアム・アーチの舞台や縦長のアーチ窓が目を惹きました。傾斜した床は丘陵地の地形をそのまま利用しているそうです。
「Searle Chapel(礼拝堂)」はちょうど西日が差し込み、堂内は黄金色に輝き、神聖な雰囲気で、ヴォーリズによる空間構想の意図を感じました。
どちらも重厚な石積みの建物に見えますが、実は石目調左官仕上げと工夫されていて美しさを損なわず合理的に構成されている事に驚きました。
さらに、家具や照明器具は殆どオリジナルが使用されており、当時の雰囲気そのままに学生達が普段使いしている事が大変貴重に感じられました。
1933年に竣工して以来、第2次世界大戦や阪神淡路大震災にも耐え、約90年以上に渡って大切に使われている事を体感出来ました。
最後になりましたが、両大学の関係者様におかれましては、年度末のお忙しい中、このような貴重な機会を我々に与えていただき、心より感謝申し上げます。
(岡田 逸美)