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ACTIVITY REPORT

活動報告

【高松支部】⽇本を代表する学校建築 重要⽂化財『⽇⼟⼩学校』⾒学ツアーに参加して

高松支部日帰り見学会
⽇本を代表する学校建築 重要⽂化財『⽇⼟⼩学校』⾒学ツアーに参加して

高松支部では、8月21日に、「⽇本を代表する学校建築 重要⽂化財『⽇⼟⼩学校』⾒学ツアー」と題し、愛媛県八幡浜市の旧川之内小学校(1950)と重要文化財日土小学校中校舎(1956)、東校舎(1958)を見学してきました。

今回の見学ツアーは土浦亀城のもとで建築を学び、戦後、八幡浜市の建築技師として、数々の公共建築の設計に携わった松村正恒の作品を巡り、日土小学校へ至る試行錯誤の過程を覗き見ることができればと思い企画したものです。

最初に、旧川之内小学校を見学しました。川之内小学校は、松村が市役所に就職した後、3年目に作られたもので、市役所時代の初期の建築となります。
校舎は狭い敷地の中で、グラウンドの面積を確保するため、目いっぱい北側の斜面に寄せて建てられています。南面のファサードはどこにでもあるような昔の木造校舎にしか見えないんですが、北側1階の土間空間と屋外廊下に松村らしい特徴があります。北面は、日射が確保しづらく、どうしても暗くなりがちなのですが、土間空間の片流れの下屋を低く抑え、下屋が取り付く外壁面に連窓のハイサイドライトを設けることで、屋外廊下に光を取り入れる試みを行っています。さらに、その光が教室内部まで届くように廊下の天井を教室に向かって傾斜させ、教室内の両面採光を得ようと計画されていました。初期の作品ではありますが、新しい学校建築を作ろうとした松村の心意気が伝わってくる作品でした。

お昼をはさみ、午後はいよいよ日土小学校の見学です。校舎は川べりに沿って、上流から東、中、西校舎と並びます。施設の老朽化により2007年から保存再生工事に着手し、東校舎と中校舎を改修した上で、西校舎を新築し、現在の教育環境にも対応できるように計画された、重要文化財指定を受けた現役の小学校です。

中校舎、東校舎とも市役所時代の終盤の作品で、   松村の試行錯誤の結果が見事に集約された、大変密度の濃い建物となっています。川之内小学校で、両面採光を試みた教室は、東校舎ではクラスター型の教室へと進化し、廊下と教室が分離し、その間の空間が中庭となり、風や光を教室に届ける役割を果たしています。

やはり圧巻は東校舎2階の図書室でした。有名な川に迫り出すテラスがあるのは、この図書室の前面になります。テラスには松村がデザインしたベンチが並び、こちらで本を読むこともできます。内部は天井に銀紙を張ったり、壁面には竹を輪切りにして星を表現したり、窓には障子があったり、ゆったり座れるベンチがあったり、非日常的な空間ですが、非常に落ち着ける場所でした。当日は、猛暑の中ではありましたが、窓を開放していれば、川のせせらぎや通り抜ける風を感じることができました。日本で一番ぜいたくな図書室と言っても大げさではありません。

現在、日土小学校の児童数は40名ほど。授業の中で、保存再生に携わった建築士を講師に招き、この学校の建築的な見どころなどを子供たちに伝えているそうです。松村が、子供たちの為に考え抜いて作った空間を何とかこの先も学校として使い続けてほしいなと感じました。案内してくれた宇都宮さんの話によると、都会暮らしをやめ移住先を探していた親子が、この日土小学校をみて、ぜひこのような学校で子供を育てたいと移住を即決した例もあったとか。

最後になりますが、本見学会を開催するにあたり、ご多忙の中、ご案内いただきました、八幡浜市教育委員会生涯学習課の宇都宮さま、夏休み中ではありますが、特別に見学を許可いただきました日土小学校今泉校長にお礼申し上げます。また、平日にも関わらず多くの会員の皆様にご参加いただきましたこと、あわせてお礼申し上げます。

(高松支部事業部 大平達也)

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